2025年2月14日に公開されたMCU映画『キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド』の感想です。
キャプテン・アメリカのシリーズ4作目、MCUのフェイズ5の映画としては5作目(ドラマを含めると14作目)になる作品です。
公開前には色々と言われていた(批評家が酷評とか)印象のある作品ですが、アクションもキャラクターも良かったし1本の映画として普通に楽しめる作品だったと思います。
以下、本作のネタバレを含んでいる箇所がありますので予めご了承ください。
目次
基本情報
画像出典:マーベル・スタジオ公式X(@MarvelStudios_J)
- 監督:ジュリアス・オナー
- 公開:2025年2月
- 評価:★3(最高★5)
『キャプテン・アメリカ』シリーズ作品の4作目にして、サム・ウィルソンの3代目キャプテン・アメリカ主人公にした初の作品。
正式に"キャプテン・アメリカ"を襲名して活躍するサム。アベンジャーズとは因縁の深いサディアス・"サンダーボルト"・ロスがアメリカ大統領に就任し、インド洋に現れた新しい資源を巡って各国の緊張が高まっていく中、ついに国際会議の場でテロ事件が発生してしまう。サムはその裏で暗躍する陰謀に立ち向かっていく。というお話。
監督のジュリアス・オナーさんはMCU作品では初めて監督を担当した人のようです。
感想など
事前に観ておいた方がいい作品
本作は『キャプテン・アメリカ』シリーズの4作目ではありますが、3作目からは主人公も変わりかなりの時間が経過しています。そのため、本作から観てしまってもそれなりに楽しめる作品だったと思います。ただ、以下の作品を観ておくと内容や物語の背景が理解できてより楽しめると思います。
【個人的に観ておいた方がいいと思う作品】
・映画『インクレディブル・ハルク』(2008年)
・ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(2021年)
MCUの初期も初期の『インクレディブル・ハルク』が思っていた以上に本作との関係が深い作品でした。そもそも事前映像の段階から存在感を放っていたのはやっぱり赤いハルク。そして本作中の重要なキャラクターでもあるロス大統領も元は『インクレディブル・ハルク』の登場キャラクターです(ロスもブルースもキャストは違うけど)。
そしてサムが現キャプテン・アメリカとなる経緯が描かれているのがドラマの『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』ですが、こちらはドラマ作品で見るのに時間もかかるし本作を見るにあたってはマストと言うほどではないと思うので、できれば見ておきたいというぐらいかなと思います。
お馴染みのマーベル・スタジオの演出が無かった
作品の内容には関係ないですが、音楽とともにアメコミのページがパラパラめくられた後に歴代のヒーローたちが出てきて最終的に「マーベル・スタジオ」のロゴになっていくMCUではお馴染みの演出がありませんでした。これには結構びっくり。マーベル・スタジオのロゴはかなり簡素に画面に表示されるだけでした。
これがどういう意図のものなのかはまだわからないですが、個人的にはあの音楽を聴くと「ああ、これから始まる!!」とかなりテンションが上がるので無かったのは残念でした。
アクション・戦闘シーンは非常に見応えアリ
キャプテン・アメリカお馴染みのシールドに加えてファルコンの翼やドローン、そしてダメージを衝撃波にして返すワカンダの技術も駆使したサムのバトルシーンはかなり派手で見応えがあったと思います。
本作のサムキャップはスーツの機能がかなり多彩で、個人的にはスティーブのキャプテン・アメリカとアイアンマンを足したようなスタイルの「ハイテク・キャップ」という感じでした。その代わりに超人血清を打っていないため身体は(鍛え上げられた)普通の人間。そのため意図して入れられているとは思いますが、単体の敵との格闘では苦戦して倒すのに時間がかかるシーンなんかも印象的でした。
「超人ではない」と言う部分はサムの葛藤としてストーリー内でも描かれていますが、スーツの力が結構凄くてシールドと合わせた戦法もかなり熟練している感じだったので、正直見ていて「そこまで超人血清にこだわらなくても」という感じではありました。今回のサムキャップはスティーブのキャップと戦っても結構いい勝負になるんじゃないかとという印象でした。というかダブルキャップ対決見てみたい!!
あとはインド洋上での艦隊や戦闘機も含めた空中戦シーンは本作を見ていて一番良かった所ですね。"キャプテン・アメリカ"でありつつ"ファルコン"でもあったサムと、本作ではサムの相棒として2代目"ファルコン"となったホアキン・トレスを活かした空中での戦闘シーンをしっかりと入れてくれたのは良かったと思います。
ストーリーは結構平凡・政治サスペンスは浅い
ストーリー部分については結構平凡というか、予告の段階で明かされていた内容から予想できる範疇を超えてはこなかったなと思います。及第点ではあるけどそれを上回るシナリオ上のサプライズが無いというか、「まあ期待してたぐらいの内容通りでそれなりには楽しめたかな」という感じ。
あと本作のもう一つの軸になっていた政治サスペンスの部分は正直お粗末だったと思います。一歩間違えば世界大戦が勃発してしまうというキューバ危機のような雰囲気を描きたかったんだと思いますが、その辺はかなり今一つというか展開も描写も稚拙で浅いという印象。インド洋での戦いの後しれっと条約調印まで行ってたのはびっくりしました。え、あれで解決?尾崎首相納得したの?日本艦隊側に損害出てるし事件の真相も闇のままなんだけど・・・、という感じの印象を抱いた人は少なくないんじゃないかと思います。サスペンス部分は全然と言う感じですが、ただまあ正直MCUの映画にそこの部分はそもそも大して期待していない(期待していた戦闘シーンは実際よかった)ですし、個人的には大きなマイナスとしてカウントするほどではなかったと思っています。
レッドハルクはサプライズの方が面白かった
本作のストーリー展開であれば、レッドハルクの登場は事前情報なしでサプライズ登場にした方が面白かったんじゃないかと思います。
シナリオ上はロスの飲んでいた薬などがレッドハルク登場の伏線として配置されていたわけですが、観ている側としては「うん、それレッドハルクの伏線だよね」としかならなかったので、シナリオの見せ方と事前に出された情報が今一つ食い違っていたようには感じました。それによってインド洋での戦いの後のストーリー展開は100人いたら100人が予想できる既定路線になってしまったように思います。事前情報ではレッドハルクは完全に伏せ、作中で伏線をちょっとずつ小出しにした最後の最後でどーんとハルクが出てきたらかなりのインパクト(『スパイダーマンNWH』でアンドリューが出てきた時みたいな)になったんじゃないかと思います。
ただ、そうすると事前のプロモーションが新キャップのみになってしまい、それでは弱いと判断されて今回のレッドハルクを推していくような形になったんだと思います。そこは個人的にも実際に納得できる事情だと思いますし、実際に干渉したときの面白さと、そもそも観に来てもらわないと始まらない、といったあたりのバランスは難しい所だと思います。
なので自分の中での結論としては、知らなかった方が楽しめただろうけど、諸々事情考慮するとやむなし。って感じかなと思っています。
日本強腰すぎ問題
本作における「世界の緊張」の中心にいたのはなんと日本。
アメリカ大統領の要請に対して毅然と「NO」を突き付け、インド洋に艦隊を派遣して攻撃されたら容赦なく報復のミサイルをぶっぱなす。アース616の日本は「俺の知ってるのとだいぶちゃう」めっちゃ強腰な日本になってました。日本が条約批准しなかったら他所もしないみたいになってるし。MCU世界では日本はまだ主要なヒーローは輩出してないし、サノスパッチンの時に他国より国力維持できる消され方にしてて作中世界でのプレゼンスがかなり高くなったとか?中々に謎(笑)。
これを「リアリティがない」「マーベルさんなんか日本に言いたいことあるんけ?」といった感じでマイナスに取るか「アース616の日本強すぎワロスwww」と取るかはまあ人それぞれかなと思いますが、個人的には後者寄りでフィクション作品における描写ということで単純に面白かったと思います。
登場キャラクターはみんな魅力的
今回の登場キャラクターはみんな個性的で魅力的だったと思います。
まずは主人公のサム。スティーブ・ロジャーズと自身とのギャップに葛藤する新キャプテン・アメリカ、ということで見ていて応援したくなるヒーロー。元々スティーブの相棒ポジだったころからもクセや嫌味の無い性格で、視聴者からの好感が持たれやすく、今後新生アベンジャーズのキャプテンとしてふさわしいキャラクターだったと思います。前にも書きましたがスーツが多機能・高性能(あとめっちゃカッコいい)ということで、「超人血清を打っていない自分」に思い悩むシーンが結構薄味になってしまっていたのは難しいとこです。
本作におけるサムの相棒・サイドキックのポジションにいたのが2代目ファルコンことホアキン・トレス。ドラマの『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』で初登場し、キャップとなったサムからファルコンのスーツを引き継いでいます。口数が多く軽い性格ですが、結構いいキャラクターしていたと思います。新生アベンジャーズではサムのサポート役(それこそスティーブがいた頃のサムみたいな)になりそうですし、結構若い感じだったので「ヤング・アベンジャーズ」の方でも(企画が頓挫してなければ)活躍を期待したいキャラクターです。
あと個人的に好きだったのは元レッドルームのウィドウで、現在はロスの側近のルース・バット=セラフ。最初はサム達と対立する嫌味系キャラかと思ってたら実際は普通に協力してくれるいい奴だったというキャラクター。長身の役者たちに囲まれて、小柄ながらちゃきちゃき有能に動き回っているのはキャラが立っていて可愛かったです。元ウィドウということでナターシャや『サンダーボルツ*』でメインキャラになるエレーナとの関係も気になるし、本作単発ではなく今後の作品への登場にも期待。
"幻のキャップ"ことイザイア・ブラッドリーとサムとの関係や、前述の強腰すぎる日本の尾崎首相なんかも見ていて楽しいキャラクターでしたね。
本作の最重要人物であるロスと、本作ヴィランのサミュエル・スターンズは次以降の項目で。
サディアス・"サンダーボルト"・ロス
本作の最重要人物のロス将軍。
本作ではなんと大統領まで上り詰めた。
初登場はMCUの2作目『インクレディブル・ハルク』で、主人公ブルース・バナーの恋人であるベティの父親。さらにはブルースをハルクにした黒幕と言ってもいい人物で、ハルクの制御が効かないと知るやブルースを始末しようと追いかけまわした。その後『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』に登場し、アベンジャーズに「ソコヴィア協定」の締結を迫り、バッキー(ウィンター・ソルジャー)をかばおうとするスティーブを危険人物とみなし逮捕させようとした(実際にサム達はラフトにぶち込まれた)。その後もちょこちょこMCU作品には登場していますが、基本的には一貫してヒーローや超人を嫌い、危険な存在として扱おうとする人物。要は視聴者目線からすると「ヤな奴」「(直接の敵でなくとも)味方じゃない」キャラだったと思います。
本作ではハリソン・フォードにリキャストされ、主人公サム以上に物語の中心として重要なポジションにいました。結論から言うと本作でも基本的には善人では全くなく、今回の事件もロスのやっていたことへのしっぺ返しというのが真相でした(それで世界大戦起こされちゃたまらん)。まあもろもろ差し引いても「クソ野郎」と言っていい人物なんじゃないかと思います。そもそも裏でやっていたことは置いといても、平時のシーンでも追い詰められるとテンパって癇癪を起していたり、「誰だコイツを大統領にしたのは」と言いたくなる人ですね。
ただ、それよりもなりよりもハリソン・フォードが凄かった。冷静にみると「幼稚な悪人」という感じのロスのキャラクターに対し、観客への画面上での説得力を持たせる俳優としての絵力が凄まじかったと思います。
ちなみにマーベルでロスというともう一人「エヴェレット・ロス」と言う人物がいます(サディアスと同じファミリーネームなだけで関係は無し)。こちらは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で初登場し(つまり『シビル・ウォー』にはロスが2人いた)、バッキー逮捕の指揮を執った人物です。その後は『ブラックパンサー』系の映画2作品に登場し、「サンダーボルツ」の結成に大きくかかわる人物であるヴァレンティーナの元夫と言う設定が判明。こっちのロスさんは基本的には善人。これまではロスが2人いてちょいちょい「あれ、どっちだっけ」とかなることもありましたが、本作でばっちり自分の中での印象の住み分けがされたなという感じです。
サミュエル・スターンズ
本作のヴィランであるサミュエル・スターンズ。
ハルクの事件でブルースの血を浴びてしまい、超人的な頭脳を得る代わりに見た目がかなり変わってしまった人物。さらにはその能力に目を付けたロスによって監禁・利用されていたという、本作での描写だけを見るとヴィランながらややかわいそうな人物(『インクレディブル・ハルク』での行動からすると元々ヤバい奴ではあったけど)。
肉体的な強さは常人と同じ(能力は頭脳のみ)で、謀略・策略によってヒーローを追い詰めていくヴィランと言うことで『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』のバロン・ジモに通じるものを感じるキャラクターです。ただ、前の方でも書いたサスペンス部分のプロットが微妙なせいで、彼自身も小物感が拭えないままで終わってしまったという感じでした。
ちなみにアメコミでは「リーダー」というヴィラン名を持っているらしいですが、本作では未登場。
ラストについて
エンディング以降のネタバレ有り
今回のエンドクレジットシーンではラフトに収監されたサミュエル・スターンズがサムに「マルチバースにおける他のヒーロー達の存在や、マルチバース間での戦いの可能性」を示唆する話をして終了。
アベンジャーズ再結成の動きも含めて、本作でようやく『マルチバース・サーガ』が動き出したという感じでした。最近は単発物のドラマばっかりで正直お腹いっぱいだったので、合流作として予定されている『アベンジャーズ:ドゥームズデイ』に向けて動き出した感があるのは良かったです。
あと本作のラストで同じくラフトに収監されたロス。サムとも和解し娘のベティとも無事再会。もうヒーロー達と対立する描写はされなそうな雰囲気のロスですが、次に予定されている映画が『サンダーボルツ*』なのでそことの絡みは気になる部分です。アメコミでは「サンダーボルツ」の名前の由来はロスの渾名である"サンダーボルト"から来ているという(後付け?)設定があるようなので。
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