2025年6月13日に公開されたばかりの『ドールハウス』の感想です。
前評判が結構良かったので期待して観に行ったんですが、「王道ジャパニーズホラーの良作」といった感じで、実際かなり面白かったと思います。
以下、本作のネタバレをがっつり含んでいる場合がありますので予めご了承ください。
目次
基本情報
画像出典:公式Twitter(@dollhouse_movie)
- 監督:矢口史靖
- 公開:2025年6月13日
- 評価:★4(最高★5)
5歳の娘・芽衣を亡くした鈴木佳恵と夫の忠彦。
哀しみに暮れる佳恵は、骨董市で見つけた、芽衣によく似た愛らしい人形をかわいがり、元気を取り戻してゆく。
佳恵と忠彦の間に新たな娘・真衣が生まれると、2人は人形に心を向けなくなる。
やがて、5歳に成長した真衣が人形と遊ぶようになると、一家に変な出来事が次々と起きはじめる。
佳恵たちは人形を手放そうとするが、捨てても捨てても、なぜかその人形は戻ってくる……!
人形に隠された秘密とは?そして解き明かされる衝撃の真実とは――!?
引用:ドールハウス || TOHOシネマズより
感想
最初の10分ぐらいが結構きつい
これはXとかを検索していてもよく見かけた意見ですが、最初の10分の導入部分、つまりストーリーの大前提である最初の娘を亡くしてしまうまでの部分はかなりきつかった、というかただただ悲しかったです。話の展開上描写しないわけにはいかない部分ではありますが、ここは結構見ていてきついと感じる人も多かったと思います。
この序盤パートは正直「早く人形出て来てホラーのパートに入ってくれ」と思いながら見ていたと思います。
ハイレベルの王道展開
導入部分を追えてスタートする本作の本編ともいえる部分の展開はホラーとしてはかなりベタな内容になっています。
事故で娘を亡くしてしまった夫婦。娘によく似た人形と出会い、本当の娘のように可愛がることで元気を取り戻していく母親。しかし夫婦は新しい命を授かり、だんだんと人形は蔑ろにされていって・・・。という感じで、ストーリーの大筋は何回もどこかで見たような聞いたようなもの、『世にも奇妙な物語』とかホラーマンガとかで絶対にありそうなお話という印象です。
しかしベタというのは王道であるということ。ベタであってもそれがしっかりと高いクオリティで作られていればそれはストライクゾーンど真ん中の剛速球ストレートということ。本作もそんな感じの造りになっていて、しっかりと怖いししっかりと楽しませてもらえたと思います。
見ている側を興ざめさせるような強引な怖がらせだったり過剰なジャンプスケアといったようなものも無く、しっとりとじわじわと観客の「嫌な予感がする」方に進んでいく展開はとても良かったと思います。強引なことはほとんどしていないのにしっかり怖い、というところが「王道展開をしっかりと高いレベルで作っている」と感じさせた部分だったと思います。間延び感や退屈を感じる部分も無く、「そろそろ終わりかな」と思った所からもうひと展開もふた展開もあって、2時間弱という尺をしっかりと活かし切ってて、1つの作品としてトータルで見てもかなり満足な内容でした。
序盤から結構色々と伏線も入れられていて、「あ、やっぱりそれはそう使うよね」というスッキリ感のある伏線回収もあったり、「それも伏線だったのか」という部分もあったりで、終盤「おお~」となる部分が色々用意されていたのも良かったですね。
人形の"アヤ"についても、「見せすぎず見せなすぎず」というちょうどいいバランスだったと思います。明るいシーンではシルエットのみだったり娘の真衣と混同させるような描写ではっきりとは見せず、暗闇の中での一瞬のフラッシュや写真や映像の中といった間接的な場面では逆にけっこうしっかり動いていたりかなりおっかない顔をしていたりと、見せ方のバランス感覚が絶妙だったんじゃないかと思います。これが『M3GAN/ミーガン』みたいに明るい廊下で大股のダッシュで追いかけてきたら逆にわらっちゃう絵になってたかもしれないと思います(あれはミーガンみたいな作品だからハマってる描写という意味で悪い見せ方とは思っていません)。
役者陣も良かった
まずとにかく長澤まさみが上手い。
序盤でいち早く人形の恐ろしさに気づいて精神が不安定になっているあたりの演技が特に良かったです。序盤~中盤あたりは「実際に本当に人形が恐ろしいのか、実は長澤まさみの妄想で一人だけおかしいのか、実はおかしい行動をしているのは娘の真衣だったりすのか」とか色々と先の展開を不透明にして期待させる見せ方だったと思いますが、そこに絶妙にマッチしていたと思います。
子役も含めて他の俳優陣も良くて、「ハズレキャラ」みたいのもいなかったですね。それにしても田中哲司の「うさん臭さ満点だけど本物っぽさも備えているオカルトキーパーソン」ポジションはもう盤石って感じですね。出てきたとき「そうですよね、出ますよね(笑)」って感じでちょっと笑いました。
笑ったと言えば今回唯一(?)の芸人枠の今野浩喜の生臭坊主見習い。出番自体は少なめですがいい味出しまくっていたと思います。こっそりとアヤを別の人形にすり替えて売りに行ったシーン(だから後半のてんやわんやはだいたいコイツのせい)ではどこからか「今野、そこにアヤはあるんか?」という女将さんの声が聞こえてきたような気がしました。
総評
改めて本作の評価。
評価:★4(最高★5)
ということでジャパニーズホラーの王道を高いレベルで走り切った良作だったと思います。
本音を言えば気になる描写(特にリアリティを薄めてしまうような疑問符のつく展開や人物の行動)はそこそこあったんですが、そこは「作劇としての見せ方を優先した」と割り切れるライン内(重箱の隅レベル)ではあったので、今回は割愛しました。
その辺差っ引いてもトータルでかなり満足度は高かった、十分に楽しめた作品だったと思います。
ちなみに小説版とコミック版も発売されています。
せっかくなので映画鑑賞後にコミック版を読みましたが、映画の物語の必要な部分がしっかり描かれていて(逆に「削って問題ないな」と思える部分だけ削られていた印象)、作画も非常に綺麗で読みやすいので、映画鑑賞と併せて読んでみるのもいいと思います。