2025年3月14日に公開された映画『劇場版モノノ怪 火鼠』の感想です。
2024年7月に公開された『劇場版モノノ怪 唐傘』の続編、劇場版の第二章となる作品です。
前作でもそうでしたが、今回も「観たかったモノノ怪はこれだ!!」と思える内容になっていて非常に満足でした。
以下、一部本作のネタバレを含んでいますので予めご了承ください。
目次
基本情報
画像出典:『劇場版 モノノ怪』公式X(@anime_mononoke)
- 監督:中村 健治(総監督)、鈴木清崇
- 公開:2025年3月
- 評価:★4(最高★5)
『モノノ怪』はフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」にて2007年に放送されていたアニメ作品。主人公である謎の薬売りが諸国を巡りながら各地でモノノ怪が起こす妖異を解決していくストーリー。2~3話のオムニバス形式となっており、各回には「海坊主」「化猫」等のその回で扱われる(=薬売りが退治する)モノノ怪の名前がサブタイトルに付けられている。和風テイストの独特で美しいビジュアルや音楽が特徴。
本作はアニメ放送から17年の月日を経て2024年から公開が開始した劇場版シリーズの第二章となる作品。前作に引き続きストーリーは完全新作として製作されていて、物語は前作の第一章「唐傘」の続編として直接繋がる内容になっている。サブタイトルの通り本作に登場するモノノ怪は「火鼠(ひねずみ)」。
感想など
アニメ版や前作は観ておいた方がいい?
内容的にはアニメ版観ていなくても全く問題ないけど、前作「唐傘」は見ておいた方がいいです。
・「怪 〜ayakashi〜 化猫」*1
・「座敷童子」(2話)
・「海坊主」(3話)
・「のっぺらぼう」(2話)
・「鵺」(2話)
・「化猫」(3話)
・劇場版「唐傘」
過去作品のラインナップは上記の通りですが、そのうち本作と直接話が繋がっているのは前作の「唐傘」のみです。
アニメ版についてはそれ自体が数話完結のオムニバスになっていて各エピソードのつながりも薄くどこから見ても問題ない造りになっていますので、アニメ版未視聴で劇場版から観るのは問題ないと思います。
ただ、劇場版としては前作「唐傘」から話が繋がっているので、前作を視聴した上で本作に入ることをお勧めします。
期待通りの「モノノ怪」
本作の内容は「期待通りのモノノ怪」って感じだったと思います。
前作の感想でも書いたんですが、ノイタミナの深夜アニメ時代から見てきた「モノノ怪」の劇場版としてしっかりと期待に沿うものがお出しされた、と言った感じですね。
やっぱりシリーズの一番の特徴はその独特で美しい世界観だと思います。凄く雑に言えば「とてもオシャレ」なビジュアルって感じですかね。画面は細かい所まで書き込まれていて非常に情報量が多く、難解だけど美しい数々の演出は劇場の大スクリーンでさらにパワーアップしているように見えました。とにかく全編通して「クオリティに手を抜かない」と言う造り手側の思いを強く感じました。
前作では軽く仄めかされるぐらいだった天子の世継ぎ問題が本作ではについにストーリーのメインとなっています。そして今回のモノノ怪は火鼠で、鼠と言えばそもそも子宝や安産の象徴であったはずのものですが、それが何故人を焼き尽くすほどの憎しみの炎をまとったモノノ怪と化してしまったのか。そういった怪異の謎や大奥の裏に蠢く怨念・情念といったものを薬売りが解き明かしていくという、流れとしてはお馴染みのものになっています。モノノ怪の"形と真と理"を解き明かしていくミステリーパートを美しい映像美と演出と共に楽しみ、最後は物語も視聴者のテンションも最高潮になる退魔の剣を解き放つパートでフィニッシュ、といった流れはもう様式美って感じですね。
さらに本作は比較的話がストレートで、(難解な話の多い「モノノ怪」シリーズの中でも)結構わかりやすくすんなりと入ってくるように作られていたと思います。なので終盤明かされる真相と言う部分では前作より弱くなっているようには感じますが、単体の映画作品として楽しむにはこのくらいわかりやすくてもいいんじゃないかなと思いながら見てました。その分映像や演出の美しさを堪能できたり、個々のキャラクターの性格なんかをゆっくりと見る余裕ができたって感じかな。
ただ、シリーズとしてはかなり結構王道なパターンが2作続いているので(それも勿論楽しいんですけど)、最終章となる次作「蛇神」でもそのパターンを貫いてくるのか、それとも何かしらの捻りを入れてくるのか、と言った部分は楽しみな部分であり気になる所です。
本作のメインキャラクターは大奥の上位に位置するフキとボタンの二人(逆に前作メインの二人はアサがちょろっと出てきたくらい)。特に天子の寵愛を一身に受けているとされながらも前作ではほとんど出番の無かったフキ(褐色の子)がメインヒロインって感じですね。このフキとボタンはそれぞれに好感が持ててヒロインとしての魅力を持ったいいキャラクターだったと思います。個人的には特にフキが良かったですね。あとはやっぱり広敷番の坂下が良かったかな。緊迫感のある展開をしていく中での「緊張と緩和」の「緩和」を担ういい役どころだと思います。さらに本作では前回の事件を経て薬売りへの信頼も生まれてきたりしていて、それを踏まえた見せ場があったのも良かったです。
次回、最終章
次回は劇場版シリーズの最終章となる、第三章「蛇神」。公開は2026年春を予定しているようです。
雰囲気的には引き続き大奥を舞台にして残された最後の闇を解き明かす、といった感じのストーリーになりそうな感じかと思います。ここまで結局ほとんど空気だった天子(将軍)はメインとして絡んでくるのかな?ただ、この劇場版シリーズの主題は「大奥」ということでやっぱり女性たちの話が物語の中心に来きそうだし、このままほとんど出てこないってのもありそう(むしろそっちの方が濃厚な気がする)。
まとめ
ということで2作目も非常に大満足の内容になっていたと思います。
引き続き3作目にも期待して続報を待ちたいと思います。
*1:オムニバス作品集のうちの一つで、アニメ『モノノ怪』はこのエピソードを元に独立・派生作品として誕生した