ゆめろぐ

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仕事・趣味・生活について書き連ねていく雑記ブログです。

【読者感想文】邪馬台国はどこですか?




昔中学生ぐらいの頃に読んだ比較的ライトめの歴史ミステリー短編小説。
先日たまたま書店で見かけて久しぶりに読んでみようと思い購入。



 

邪馬台国はどこですか?

邪馬台国はどこですか?

 

  • 著者:鯨統一郎
  • 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
  • 発売日:1998/5/29
  • 頁数:316ページ
  • オススメ度:☆☆☆☆


ブッダは悟りを開いていない、邪馬台国の本当の場所は九州でも畿内でもない、聖徳太子の驚きの正体、本能寺の変の光秀謀反の本当の理由、明治維新の真の黒幕、イエスは奇跡を起こしていない・・・、歴史上の定説を軽々と覆すようなトンデモ説が次々と飛び出す軽快な歴史ミステリ。前述のテーマ毎に6編の短編から構成されています。
 
 
歴史上の謎をテーマとして扱っているが歴史書・解説書のようなものではなく、各編に共通の登場人物がおり毎回歴史談議に花を咲かせるという小説の体をとっています。毎回のテーマの背景として必要な予備知識については話の中で分かり易くかつ物語の展開を阻害しない程度の軽さで解説されており、特に歴史に詳しいというわけではなくともだいたい中学校の歴史の授業レベルの知識があれば十分に楽しめる内容になっています。

毎回小さなバーを舞台に、タイトルにもあるようなトンデモ説を展開する謎のライター宮田、歴史的な定説で反論する史学界の才女静香、一歩引いた冷静な視点で議論にアクセントを加える大学教授の三谷、そして三人の議論を毎回楽しみにしている歴史素人のバーテンダー松永の四人が毎回様々な歴史の謎談義を繰り広げていく。話を突飛な方向に展開するもの、反対の立場から反論するもの、一歩引いたフラットな視点から参加するもの、読者の視点から議論を傍観するものというもはや様式美と言ってもいい役割分担。共通の登場人物が同じ場所を舞台に毎回話を進めていくというのは、ミステリとしては安楽椅子探偵ものと言ってもいいかもしれません。


内容的には歴史学者・宗教学者が見たらブチ切れそうな気がするものもあったりするけど、そこはあくまで小説として楽しむのが吉。ただそんなトンデモ説も、読み進めていくとだんだん「これが真実なんじゃないか」と思わされそうになる話の展開は秀逸。根拠として様々な文献の記述も紹介されていて、その元ネタ(?)となった文献や書籍(それこそ魏志倭人伝や旧約聖書なども)にも興味が湧いてきます。
 

もともと真実というものは、もっとも矛盾の少ない仮説だと定義できる。(106ページ)

 
当たりまえのようだが胸に残る考え方。
残念ながら現状調べられる情報を見ていても邪馬台国の本当の場所が本書に書かれている通りと証明されたというような話は見当たらないが・・・。




あと本筋とは関係ないですが、「禁煙は簡単だ。なぜなら僕はもう百回している」という言葉に作者がいたとは思わなかった(トムソーヤの冒険等の著者マーク・トゥエインが言った言葉らしい)。ネットのコピペネタかと思っていた。