伊坂幸太郎作品の再読3本目。
残り全部バケーション
- 著者:伊坂幸太郎
- 出版社:集英社文庫
- 発売日:2015/12/25(文庫版)
- 頁数:302ページ(文庫版)
- オススメ度:☆☆☆☆
単行本は2012年12月に集英社より刊行されています。
裏稼業コンビ・岡田と溝口を中心にした全5章の連作短編小説。
父親の浮気で解散寸前の一家の元に届いた「友達になりましょう」というデタラメな番号で送られたメール。メールをしてきた謎の男・岡田と一家の奇妙なドライブはどこに向かっていくのか。といった感じの導入から物語は進んでいく。(いつも思うけど伊坂さんの小説のあらすじ書くの難しいなぁ…)
各章ではそれぞれ異なる時間、異なる場面が描かれていますが、各所にちりばめられた伏線が最後に糸がほどけていくように繋がっていくのはさすがの伊坂小説。個人的には2章・4章あたりが好き。
改めて伊坂さんの小説は読み進めていくプロセスが何よりも楽しいと思わされました。不穏な空気のシーンであっても、どこか軽快なコントのような小気味のよさを感じさせる会話の掛け合い、離れたところに配置されていると思っていた個々のストーリーが繋がっていく爽快感、一度読み始めると次へ次へとどんどん進みたくなって止まらなくなってしまうのが各作品に共通する特徴だと思います。電車の中などで読んでいると、目的地の駅についても降りたくなくなるのが危険。読み終わったあとは、それこそ天気のいい日に気持ちのいいドライブをした帰り道のような気分になります。
何かのあと書きだったかどこかで伊坂さんが語っていた「文章で描く部分と描かない部分の選択が作家の腕の見せどころ(意訳)」という言葉を感じさせられた作品。章と章を繋げる伏線の回収など、描こうとすれば文章にできただろう部分があえて書かれていなかったりする。そこに読者が伏線を拾って思い出して話を繋げる"気付く楽しさ"を感じる余地が与えられているように感じます。その「読者が頭の中で補完する部分」と「書かれている部分」とのバランスが絶妙だからこそ、あの清々しい読後感になるんじゃないだろうかと思いました。その点が顕著なポイントの1つがラストの2行。もう1ページ分ぐらい語って欲しくもあるような、「やられた!」と言いたくなるいい感じの余韻を残して終わらせたような、いいバランスの気持ちのいいラストでした。
もう1~2作ぐらい伊坂作品を読んだら少し他の作家かジャンルにいこうかな。