ゆめろぐ

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【映画感想】『LAMB/ラム』 余白を楽しむ映画




映画『LAMB/ラム』の感想です。


「感想を一言で」というと何と言ったらいいのか難しい映画でしたが、「面白かった」でも間違いではないと思います。とにかく考察する余白の沢山ある映画で観おわってからあーだこーだ考える所までを含めて楽しむのがいい作品だと思いました。


以下、一部ネタバレが含まれています。本作はネタバレを一切入れないで観に行った方がいい映画だと思いますので未視聴の方はご注意ください。
 


目次

 


基本情報


画像出典:映画『LAMB/ラム』 公式Twitter(@LAMBMOVIE_JP)
 


ある日、アイスランドで暮らす羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”の誕生を目撃する。2人はその存在をアダと名付け育て始めるが——。
公式サイトより抜粋

 

  • 監督:ヴァルディマル・ヨハンソン
  • 製作:アイスランド・スウェーデン・ポーランド
  • 公開:2022年9月(日本)
  • 評価:★4(最高★5)

 
アイスランド・スウェーデン・ポーランド合作のホラー映画。
レーティングはR15+(15歳未満の入場・鑑賞を禁止)。


 
 

ネタバレを見ないで観た方がいい

 
本作はネタバレを一切見ないで観た方がいい作品だったと思います。


予告編(Youtubeとかで観れる)が非常にいい塩梅になっていて、産まれてきた「何か」の正体が気になりながら観に行って観ている間もあーでもないこーでもないと考えながら観るのが楽しい作品だと思います。


逆にある程度の展開を知ってしまっていると、穏やかな空気で代わり映えのしない景色を見続けている感じ(時間も2時間弱と長め)がして退屈に感じてしまうかも。

 
 

感想など

 
以降、本編のネタバレが含まれますのでご注意ください。
 
 

まさにヨーロッパ映画??

本作はアイスランド・スウェーデン・ポーランドの合作で舞台はアイスランド。

個人的にはヨーロッパの映画と言うとハリウッドやアジアの映画に比べて「終始穏やかな(ともすれば暗い)雰囲気で淡々と進んでいき、観る側に色々と考えさせる余白の多い作品」という印象がありますが、本作はまさしくその通りといった感じの作品だったと思います。


観ていると宗教なのか神話なのかの隠喩が沢山散りばめられていて、ネットでもかなり盛んに考察がされています。解釈という意味ではもしかしたら「正解」がある映画なのかもしれませんが、とりあえずはあーだこーだ考えながら観るだけで十分楽しめた作品でもあると思いました。



非常にセリフが少ない

前で「ヨーロッパ映画は静かで穏やかな雰囲気」と書きましたが、本作はそれに輪をかけてセリフ数の少ない作品だったと思います。そもそもメインとして登場するのは主役の夫婦2人にサブで夫の弟、後は端役的なポジションが何人かと言った程度。とにかくセリフ量が少なく、全編通して静かな映画です。大きな音が出るシーンも少ないので、久々にポップコーンをエンドロールまでに食べきれない映画になりました。


登場人物の置かれた状況や物語の背景等を説明してくれるセリフもほとんどなく、基本的には少ない会話や観ている映像から察していくというのがメインになります。どちらかというと日本の映画などは1から10までセリフで説明してくれる作品が多いと思いますので、その点では対極にあると言っていいかもしれません。


それについて本作に対して「説明が無さすぎてわからない」という感想もあるかもしれませんが、個人的には本作はこれセリフ量で十分だったんじゃないかと思います。作品側で「これだけの情報があればあとは考えればわかるでしょ」という線をきちんと引いていたというか。終始ゆっくりとしたペースで進む映画に対し、反対に観ている側は「ここからどうなっていくのか」「あそこはこうなのかもしれない」などとずっと頭フル回転状態でいた様に感じます。そのためか、2時間弱という尺も全然長く感じませんでした。終わり方の唐突さもあったとは思いますが「え、もう終わっちゃった?」という感じだったと思います。
 


観る側が考える「余白」が多い

前述の台詞量の少なさもあって本作はとにかく説明が少なく、観ている側に考えさせる要素が多くありました。


例えば夫婦が「アダ」を自分たちの子供として育てていくに至った理由や感情はほとんど言葉では語られていません。しかし劇中の少ない会話や映像で提示される情報から「前にも同じようなことがあったのか?」「夫妻には幼くして亡くなった子供がいてその代わりの様に感じているのか?」「そもそもそれが不自然ではない世界観なのか?」など考えながら観ていくことになるわけです。


また、そんな中で我々観る側に世界観を提示してくれるのに一役買っていたのが夫の弟であるペートゥルの存在。彼がアダを見て視聴者を代弁するかのように「なんだあれは?」と発したことで、夫婦の行動はやっぱり異常でありそうなった背景には相応の事情があることが見えてくることになります。そんなペートゥルもあるタイミングを境に突然アダと仲良しになっている(これについては説明無し)ことで、一見楽しく幸せな家族に見えているながらもやはり何か異常なことが起きているという不穏な空気を観る側に感じさせていました。


そもそもアダは何者なのかも含めて作中で答えの提示されなかった部分は多く、エンドロールを見ながら考えたり、一緒に観た人とああでもないこうでもないと語り合ったり、ネットで色々な人の感想や考察を見たり、そういった鑑賞後のあれこれも含めて「余白を楽しむ」という映画体験ができる作品ではあったと思います。
 

 

そもそも最後の「アレ」は何だったのか?

最後にでてきた頭は羊で胴体は色黒ムキムキの人間だったアイツは結局何だったのかも劇中では一切語られませんでした。正直出てきた時は唐突すぎて笑っていいのかリアクションに迷いました。


ただ、パンフにはしっかりと相関図が書かれていたようで、アイツの名前は「ラムマン」といいアダの父親であることは確定なようです。とするとアダはラムマンと母羊(こっちは普通の羊)の子であることはいいとして、ではラムマンは何者?なぜ妻である母羊を撃ったマリアではなくその夫のイングヴァルだけを殺したのか?というあたりはご想像にお任せといった感じなようです。その地に伝わる神か悪魔的なものなのか、もしくは人間と羊のアレで産まれたハーフで、アダはクオーターになる(だから片手が羊だったりとラムマンより羊要素が多い)とかなのかも。実はラムマンの父親はそういった嗜好を隠し持っていたイングヴァルで、異形である自分やアダを産み出した元凶であるイングヴァルを憎んでいたとか、どうかな。無いかな・・・。



キリスト教的な比喩?

前述の通り本作は宗教か神話っぽい比喩・暗喩が多く合ったように思えました。ちなみにアイスランドで最も多く信仰されているのはキリスト教なようです。


そもそも「子羊」自体がイエス・キリストを示すことがある言葉であり、物語の最終盤になってやっと明かされた妻の名前が「マリア」というのも全く意図が無いとは考えられないと思います。


僕自身はそのあたりの宗教関連の知識はほとんどないので下手なことは言わない方がいいような気もしますが、ソフト化されたらその辺を隅々まで解説してくれるYoutube動画やブログあたりが出てきてくれないかな~と思っています。








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