2023年4月28日に公開された『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』の感想です。
公開から1ヵ月以上が経過してやっとの鑑賞になりましたが、すでに全世界における興行収入が12億ドルを突破し、『アナ雪』を抜いてアニメ作品の歴代2位に浮上しているようです。見事な全世界大ヒットといった感じの勢いで、1ヵ月遅れで観に行ったわけですがいまだに劇場の中でも大きいスクリーンが複数使われていました。アメリカの批評家からは酷評されているらしいですが、一般の観客からは絶賛で前述の通りの大ヒット。スター・ウォーズep8と真逆の状態になっているって感じですね。
個人的にはそれなりに面白かったと思いますが、「大傑作!」「素晴らしい!」というほどには刺さらなかったかなという感じ。無難な良作というのがストレートな感想です。とはいえ、随所にマリオのゲーム作品の要素が詰め込まれており、娯楽映画としては一級品の作品になっていたと思います。
以下、本作のネタバレを含んでいる箇所がありますので予めご了承ください。
目次
基本情報
画像出典:映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』公式Twitter(@mariomoviejp)
- 監督:アーロン・ホーバス、マイケル・イェレニック
- 脚本:マシュー・フォーゲル
- 製作:イルミネーション、任天堂
- 公開:2023年4月
- 評価:★3.5(最高★5)
任天堂のテレビゲーム『スーパーマリオ』シリーズをベースにしたアニメ映画作品。製作はイルミネーション。
ストーリーは歴代の『スーパーマリオ』シリーズをベースにした本作オリジナルのものになっている。
感想
全体の感想
まずは全体の感想から。
評価は★3.5(最高★5)としました。
冒頭記載した通り、特に悪い所もなく普通に面白かったですが、個人的には「大絶賛!!」というほどに刺さるわけでもなかった「無難な良作」といった感じだったと思います。ただ、映画の全編にわたって『マリオ』作品の要素がこれでもかと詰め込まれており、娯楽映画としては超一級品の作品になっていました。
客層もやはりファミリーが多かったですし、デートや家族で楽しむ娯楽作としてはぴったりの作品になっていると思います。
勿論、ゲームをプレイしたことがなくても十分に楽しめる作品になっています。所謂「ファンが楽しめる作品」であることは間違いないと思いますが、他の作品やキャラクターに比べても知名度が莫大すぎてそもそも「マリオをあまり知らない」という人がほとんどいないというのもマリオの凄い所かもしれません。
ビジュアルは完璧
流石に製作が『ミニオンズ』『ペット』『SING/シング』等のイルミネーションということで、アニメ作品としての映像部分は「素晴らしい」の一言だったと思います。キャラクターやマリオの世界観がばっちりと描かれていました。
ビジュアル面では100点満点の作品といっていいものでした。
マリオの作品の要素が満載
2Dマリオのシリーズのみならず、3Dマリオシリーズや『マリオカート』に『スマブラ』等といったところまで、マリオ作品へのリスペクトがこれでもかと盛り込まれていました。ここに関してはやはりマリオのゲームを知っていれば知っているほど面白い部分ではあると思います。物語的には扱いの難しそうなマリオカートについても違和感なくストーリーに取り込まれていて、レースシーンは見ていて興奮できる中盤の山場になっていました。
DVD販売や配信が開始されたらゆっくり止めながら画面内にちりばめられた小ネタやキャラクターを一つ一つ見つけていくのも楽しいと思います。
また、BGMも全体的に良かったです。シリーズお馴染みの名曲がいい感じのアレンジで使われていて、聞いていて楽しかったです。
意外だった設定
始まって意外だったのが世界観の設定。てっきり「キノコ王国の住民マリオが~」という感じで始まるのかと思ったら意外にも舞台はアメリカのニューヨーク。マリオ・ルイージの兄弟は普通にこの世界の住人として描かれていました。仕事である配管工をしているうちにとあることから地下で偶然発見した土管(マリオではお馴染みの)に吸い込まれ、気が付いたらピーチやクッパやピノキオなどがいるゲームでよく見るあの世界に来ていた、といった導入になっています。
この流れは正直意外でしたが(まさかの昔の実写映画『魔界帝国の女神』リスペクト?笑)、終盤の展開やピーチの生い立ちなどにも綺麗につなげられていて正直いい設定だったと思いました。
ストーリーは確かに薄い
本作への批判点として「内容が薄い」という評価はちょいちょい見ていましたが、そこは確かにと思う部分もあったと思います。ストーリー自体は単純明快で、正直ある程度は予想できるような展開がラストまで続いたというのは事実だと思います。
ただ、「そもそもマリオのゲームってそーゆうもんだし」と言ってしまえばそこまでだし、深く考えることなく気楽に楽しむ娯楽作品ということを考えるとこのストーリーで良かったんじゃないかと思っています。
ほどよい長さ
本作の上映時間は90分そこそこ。マリオほどの超大作となると短いようにも感じる数字ですが、ファミリー(特に子供)向けという所も含めてちょうどいいボリューム感だったと思います。全体的に展開も早く、飽きることなく最後まであっという間に過ぎてしまったという印象でした。逆にこれで2時間越えの長さとかになると、途中で飽きが出てしまっていた可能性もあると思います。
2時間半越えが当たり前のマーベル作品ばかり見ている僕にとっては非常に優しい長さで良かったです(笑)。
吹き替えも良かった
今回吹き替え版で観ましたが、それで正解だったと思います。吹き替え声優陣はどのキャラクターもはまり役といっていいぐらい素晴らしかったです。
本作はディズニーアニメのように吹き替え版がメインになる(現に字幕版の方がシアターが少ない)作品だと思いますが、個人的にも字幕を見る必要がなく画面に集中できる吹き替え版の方がおすすめだと思います。
キャラクターについて
キャラクターも全体的に魅力的(ビジュアル・ボイスともに)に描かれていました。
まず主人公のマリオ。やや情けない部分が強いかなとも思いましたが、やられてもやられても何度でも立ち向かっていく姿はファミコンのマリオブラザーズで何度ミスしてもクリアできるまでコンテニューを繰り返していたプレイヤー自身の原体験を思い出させました(今思えば当時のマリオも死にゲーと呼べるものだったと思う)。まさにマリオといった感じのキャラクターに仕上がっていました。
これまで以上に強くて勇ましいピーチ姫を予告を見たときは現在のエンタメ業界の足を引っ張る例のアレの匂いが一瞬したような気がして嫌な感じになりかけましたが、よく考えるとそもそもFC・SFC時代からUSAやRPGやマリカーなどではバリバリプレイヤーキャラとして活躍してましたし、本作中でも強くて可愛らしい魅力的なキャラクターになっていたと思います。
立ち位置的にピーチ姫の煽りを受けたように見えたルイージでしたが、終盤しっかりといい感じの活躍の仕方をしていたと思います。
唯一違和感のあった所
全体通して悪い所はなかったと思いますが、一つ強烈に違和感のある部分がありました。
これは結構他の人の感想でも見たように思いますが、牢屋のシーンにでてきたあの青く光る星みたいな奴(元は『マリオギャラクシー』のキャラ)。一人だけ明らかに世界観とずれまくったセリフを連発していて、以上に異物感の強いキャラクターでした。やけに意味深な発言をする割に特に重要なポジションのキャラというわけでもなく、最後の最後でもともすれば「作品の余韻に水を差している」とも取れかねない発言をしていました。
特徴的な声(声自体は普通に可愛い感じ)に加え、ビジュアル面でも暗い場面に一人光っていることもあって嫌でも「何かメッセージがあるのか」と意味を邪推してしまう雰囲気でした。特に不快だったとか嫌いなキャラというわけではないんですが、正直なぜいれたのかがよくわからなかったキャラクターでした。
総評
改めて本作の評価。
評価:★3.5(最高★5)
ビジュアル面は最高で、ストーリーのテンポは良く、マリオ愛がこれでもかと詰め込まれた、娯楽作品としては一級品と言える作品でした。
ただ、個人的にそこまでの高得点にならなかったのは、多分僕個人の好みの問題ですがドカンと印象に残るシーンがあまりなかったからだと思いました。90分通して平均点は高いけど、瞬間最大風速があまり高くなかったというか。物語がというよりは、見ている自分の感情が比較的平坦なまま終わってしまったので、「どこかで一つか二つ大きな爆発が欲しかった」というのが残念な点と言えるかもしれません。
それでも間違いなく良作以上の部類に入る作品ではあると思いますし、ファミリーで楽しむにはぴったりの娯楽大作でした。続編を思わせるような部分もあり(これだけの超大ヒットなら可能性も高いと思う)、そこは素直に期待したいところです。