2024年10月17日にNetflixで配信された新作アニメ『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』の感想です。
本作はガンダムシリーズ初のNetflix限定配信作品です。
感想を一言でいえば「面白かった!!思っていた以上にしっかりとガンダムしてた!!」といった感じで、期待以上の内容で非常に満足度の高い作品でした。Netflixは過去に契約してたものの一旦解約している状態だったので今回再契約したんですが、1ヶ月分の契約金額払ってでも観る価値ありのです。全6話ですが、1話24分前後でクレジット等を飛ばせばトータルでも2時間半いかないぐらいで見れてしまうので、1本の映画みたいな感じで一気見してしまうのがいいと思います。
以下、一部本作のネタバレを含んでいますので予めご了承ください。
目次
作品概要
画像出典:Netflix Japan公式X(@NetflixJP)
配 信:2024年10月16日
話 数:全6話(1話24分)
総監督:エラスマス・ブロスダウ
『機動戦士ガンダム』の外伝作品として製作されたCGアニメーション作品。
一年戦争終盤のヨーロッパ戦線を舞台に、ジオンの欧州侵攻部隊の戦いを描いたオリジナルストーリーになっている。物語は宇宙世紀0079年の11月6日、オデッサデーの前日からスタートする。戦争が長期化し地球上で劣勢を余儀なくされているジオン軍と、そこに襲い掛かる連邦軍のMSの脅威が重厚かつリアルに描かれている。
暴力・残酷描写等によりNetflixでのレーティングは「16+(16歳以上の視聴を推奨)」とされている。
ガンダム作品の知識は必要か?
まず本作を視聴するにあたって他のガンダム作品の知識が必要かという部分ですが、結論から言うと「特に他作品の知識は必要ありません」。ファーストガンダム(一年戦争)を舞台にした話、ぐらいのことが分かっていれば十分楽しめます。
なんなら一切ガンダム見たことが無い人でも戦争映画とか大丈夫であればここから入るのもアリではないかなと思います。「地球連邦軍(地球に住む人)とジオン軍(宇宙に住む人)が戦争していて、主人公陣営はヨーロッパを攻めに来ているが、兵站の差から劣勢に立たされ始めている。オデッサはヨーロッパにおけるジオンの最重要拠点。」ぐらいの前提で一つのミリタリー作品・人間ドラマとして十分に楽しめるだけの完成度になっている作品です。
感想など
フルCGのアニメーション
本作の他作品との大きな違いはやはりフルCGアニメーションであること。他のガンダムシリーズで言うとやっぱりぱっと浮かぶのは『機動戦士ガンダム MS IGLOO』に近い感じですね(ビジュアルの綺麗さは各段にレベルアップしていますが)。
正直ここは人によって好みの分かれるところだとは思いますが、本作の作風と洋画テイストのアニメーションがかなりマッチしていて半実写作品的な感覚で観れたと思います。そして、MSのビジュアルのクオリティはめちゃくちゃ高かったと思います。CGはPS5のゲームなどの開発に使われている「Unreal Engine 5」を使用されているということらしく、最新技術でのMS描写は非常に見応えがありました。
人間の動き(歩いたりとか)に関しては、場所によっては多少カクカクしていたりする所も無いわけではなかったですが違和感を感じるほどは気になりませんでした。登場キャラクターはどれも魅力的で、物語の中盤・終盤に入るころにはしっかりと感情移入して観ていました。主人公のイリヤもいいですが、個人的にはヘイリー少尉(ピンク髪)がいいキャラしていて良かったです。もう少し尺があって活躍するシーンがあったらよかったなと思います。
戦争映画のようなガンダム
本作を一言で表すならば「戦争映画」。
印象的には『プライベート・ライアン』や『フルメタルジャケット』といった戦争ものの映画作品に近いものを感じました。これらの作品に"兵器"としてモビルスーツが登場している、という雰囲気だったと思います。
ガンダムのシリーズ作品で言うと、初代『機動戦士ガンダム』と『第08MS小隊』をベースに『サンダーボルト』の悲惨さをたっぷり練り込んでゲームの『ジオニックフロント』のジオン目線というテイストを加えたという感じかな。見応えのある戦闘シーンもしっかり描きつつ、重厚な人間ドラマと戦争の悲惨さや戦う意味を問う、そして後述のニュータイプ論にまで触れていたという部分も含めて、本当に「しっかりガンダムしていた」と思います。
恐ろしい"兵器"として描かれたモビルスーツ
とにかくガンダムが怖い。
本作の予告映像の時点で話題になっていましたが、とにかくガンダムが「恐ろしい敵」「白い悪魔」として描写されています。全体的なシルエットとしてはガンダムEz-8とアトラスガンダムを混ぜたようなデザインですが、曲線が多くて無駄が少ない割にどこかムチムチ感を感じる(なんか生ガンダムっぽくもある)デザインが非常に「戦場における異質感」を演出していたと思います。
そしてとにかく硬い。ビーム兵器や動きの素早さはガンダムお馴染みという所ですが、ジオン軍側ができる限りの最大火力をぶつけてもほとんどダメージを与えられない硬さが印象的でした。もともとガンダムに使用されているルナ・チタニウム合金ってザクのライフルとか効かないぐらいの強さを持っている設定ですが、それが非常に効果的・印象的に描かれていました。
また、ジムも登場しますがこちらも効果的に使われていました。ガンダムとの性能差があることはしっかりと描写しつつ、1機で強い絶望感を与える演出は見事だったと思います。デザイン的にはガンダムを踏襲して量産機ぽさをだしつつ、バイザーの奥のモノアイが見えるところがちょっとゲム・カモフぽいなという印象。
ジオン側で言うとグフ・カスタムが非常にカッコよかった。やはりザクとは違うカスタム機として演出されていました。本作バージョンのグフ・カスタムもプラモ出して欲しいです。
まさかのユーリ・ケラーネ
まさかの『08小隊』からのユーリ・ケラーネの再利用。
ビジュアル的にもキャラ的にもいい感じに浮いていて、全体的に重い雰囲気の本作の中での数少ない息の抜きどころになっていたと思います。
いきなり出てきたと思ったら「無茶苦茶言い出したぞこいつ」という感じでしたが、限られた尺の中でラストに向けての展開を作らないといけない製作側の事情もあったと思いますが、何となくギリギリ納得できなくもないキャラチョイスだったと思います。あとは『08小隊』の方での末路を知っていただけに登場時は主人公たちの行く末にちょっと嫌な予感もしていましたが、ほとんどゲストキャラのような扱いでラストに関わっては来なかったのでよかったです。
ニュータイプ論とガンダムのパイロット(超ネタバレ)
本作で一番以外だったのがしっかりとニュータイプ論が描かれていたこと。
作品の雰囲気的にはミリタリーメインでニュータイプ的な部分はないかなーと思っていたんですが、結構序盤から主人公イリヤのニュータイプ描写が入れられていて、終盤では物語の根幹となるテーマにも関わってきていたのはちょっとした驚きでした。
本作でも「白い悪魔」として強烈な存在感を放っていたガンダムですが、シリーズと踏襲するようにパイロットはニュータイプと思しき少年でした。ここは個人的にはかなり意外でした。作風的には子供の登場しない「大人のガンダム」で一貫するのかと思っていたので。こういった部分はガンダム初登場時のザクの頭部パイプちぎりなども含めて過去作品へのオマージュやリスペクトだったと思います。
で、このパイロットの少年。特に作中での細かい説明は無いですが、時代背景等を考えると十中八九オーガスタ研あたりのニュータイプ被験者だと思います。ペイルライダーのクロエみたいな。そしてやっぱり何より衝撃的だったあの悲劇的な最期は、わかる人にはわかると思いますが小説版ファーストガンダムのアムロを想起させるものがありました。ニュータイプになれば人と人は分かり合えるはずなのに、時代や状況がそれを許してくれない、結局人はそこに至れないという悲しいジレンマはまさに「ガンダムだった」と言っていい結末だったと思います。
まとめ
ということで非常に楽しめた良作だったと思います。
繰り返しになりますが、Netflixの契約がなかったとしても1ヶ月分の契約金額払ってでも観る価値ありの作品だったと思います。
今回せっかく契約をしたので、解約する前にもう一度ゆっくり見直したいと思います。