コラソン サッカー魂/塀内夏子
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【あらすじ/概要】
FIFAワールドカップ・予選で低迷する日本代表にドイツ人老監督と、彼が招聘したいわく付きのフォワードが加わり、ワールドカップ出場を目指す物語[1]。作者の塀内によれば本作品の執筆は2010 FIFAワールドカップ出場を目前に控え成績不振の続いた日本代表に対する不満が動機となったといい[3][注 1]、主人公・戌井凌駕については元フランス代表のエリック・カントナをイメージし「友達にはなりたくないけど、いざというときに頼もしい。シンプルでタフなエゴイスト」という作者の理想と願望を託したものだと語った[3]。
タイトルの「コラソン」はポルトガル語「coração」であり、直訳すると心臓であるが(参照:pt:coração)、心、魂の意とされている。
コラソン サッカー魂 - Wikipedia
【基本情報】
作者: 塀内夏子
雑誌: 週刊ヤングマガジン
連載: 完結済
巻数: 9巻(単行本)
【データ】
国内――――――――――海外 *1
現実☆☆☆☆☆☆☆☆☆★奇抜 *2
クラブ★★★★★★★★★★代表 *3
戦術☆☆★★★★★★★★個人 *4
※個人の感覚です。
※W杯予選のみを描いた作品のため「国内/海外」は評価なし。
【こんな人におすすめ】
- 登場人物たちの熱いぶつかり合いとそこから生まれる友情、のような熱血漫画が好きな人。
- 1994アメリカ大会予選や1998フランス大会予選を思い出させる熱く苦しいアジア予選が好きな人。
- ガンガン点を取りに行くタイプのストライカーが好きな人。
- 塀内さんの作品に心打たれた事がある人。
【レビュー】
やはり辛く苦しいW杯アジア予選を描かせたらこの人の右に出るものはいない。
アジア予選の女王(と僕が勝手に呼んでいる)、塀内夏子さんのJドリーム以来久し振りのサッカーものの連載作品。
2010年南アフリカW杯を目指す日本代表の戦いを描きます。実は全編通して3試合しか描かれていませんが、何試合もあったかのような重厚で熱いストーリーです。
(本編では20XX年と北斗の拳みたいな表現になってますが、連載時期と作中の前回大会豪州戦が現実の2006年大会初戦の豪州戦を指していることから2010年大会予選は明白かな)
主人公の凌駕は過去に暴力沙汰で日本から追放されたストライカー。
敵味方問わず暴言を吐き、相手DFにやられたらやり返すどころかやられる前から一発かましておくような男です。
しかし点取り屋としての能力や心構えはズバ抜けており、連載当時から今現在においても日本に必要とされるタイプの選手ではないでしょうか。
僕は凌駕のようなエゴ丸出しのストライカー大好きです。
概要にもあるようにエリック・カントナをモデルにしているみたいですが、現在で言えばズラタン・イブラヒモビッチとかマリオ・バロテッリあたりがイメージに近いでしょうか。
この作者はとにかく登場人物の内面を描くのが本当に上手で、時に情緒的に時に激情的にキャラクター達の思いが描かれていきます。
この人の独特の描き方のせいもあってか、乱暴者の凌駕でさえ最後の方にはカワイイ奴に見えてくるから不思議です。
※以降ネタバレも含まれるので注意。
【忘れられない名台詞】
自信が「ある」「ない」でFWやってるんじゃねえ!
要は点を取ったか取らねぇかだろ?
点を取った奴を「FW」と言うんだろう?
戌井凌駕 (単行本1巻)
凌駕がヘルマン監督に言い放った一言。
こういうザ・ストライカーは大好きです。
FWに課せられる点を取る以外の仕事が増えている中で、こんな言葉を吐ける奴はなかなかいないんじゃないかな。
しかし、ゴールという純然たる結果を示せるポジションだからこそのセリフです。
練習で止められないものが、どうして試合で止められるんだよ?
日本代表 戌井凌駕 (単行本1巻)
練習中にDFの醍醐と激しく交錯したことを咎められた時に放った一言。
練習でできないことが本番でできるはずない、というのは実際のスポーツにおいてもよく言われることです。実際には練習で出来てるのに何故か本番で出来ないことの方が多いですよね…。
ぶつかられた当の本人の醍醐は、この言葉を聞いて凌駕に興味を持つようになります。
司令塔は自分だ!
俺の動きに合わせろ!
日本代表 中神祐也
俺はFWだ
俺の動きを見ろよ!
日本代表 戌井凌駕 (単行本1巻)
ストライカーと司令塔のプライドがぶつかり合うシーンです。
パスの「出し手」と「受け手」の衝突は先日レビューしたファンタジスタでも描かれていました。
あちらは「どっちがどっちに合わせるのでなく、お互いが同じ絵(イメージ)を見ればいい」という答えを出してましたが、こっちはどうなるでしょうか。
その顔でピッチへ入れ!
闘う場所だ!
闘う顔で往け!
日本代表監督 ヘルマン・ヴィースラー (単行本1巻)
ヘルマンの「W杯に出場するすべての国が日本と同じグループになることを望んでいる(楽だから)」と言われて憤慨した選手たちに対して。
Jドリームもそうでしたがこの作者さんの作品においてのW杯をかけた試合というのは、「スポーツの試合」ではなく「国と国との闘い」として描かれています。
W杯に出ることが当たり前になった最近では、そのようなイメージが持たれることはあまりないかもしれません。
あんたは「FWの景色」を知っているか?
前に味方は誰もいねえ、ゴールだけ、自分(テメエ)で決めるしかねえそこでパスを出してたら「負け」だろうが!
日本代表 戌井凌駕 (単行本5巻)
FWとしての心構えのようなものでしょうか。
味方はみんな自分よりも後ろにいる。敵からは最大級の警戒をされる。ストライカーは最も孤独なポジションなのかもしれません。
「くそ」しか言えないのか
お前の口は肥溜めか?
日本代表監督 ヘルマン・ヴィースラー (単行本6巻)
試合後に悪態をつく凌駕に対して。
塀内さんの作品は時折このようなセンスフルな突っ込みが登場します。
とにかくゴール!
ゴールを決めさえすれば・・・
うるさい口も閉じる
自分(テメエ)の言い分も通るそうやってやってきた
点をとる!それがすべて、それが俺だ!
日本代表 戌井凌駕 (単行本6巻)
結果でもって我を通すというのは、結果が出せなかった時に味方が誰もいないと言うことです。
リスキーで辛い生き方ですが、だからこそ見ている側は憧れを抱くのかもしれません。
おまえな!
イエローカード欲しいのか?
集めてんの!?
日本代表 中神祐也 (単行本6巻)
ナイスな突っ込み第二弾。対象は当然凌駕です。
始めは衝突していた中神と凌駕ですな、こんな突っ込みが出てくるのも試合を経て打ち解けてきたということでしょうか。
ちなみに実際のサッカーでも、カードをたくさんもらう選手の事をカードコレクターと言ったりします。
一人のFW(エゴイスト)と
10人の戦士(汗っかき)!俺達はこいつのために汗をかこう!!
日本代表メンバー (単行本8巻)
何かと凌駕と衝突していたメンバー達が、W杯出場をかけた最後の試合で彼を認めて彼のゴールのために全力を尽くすことを決めたシーン。全ては勝利のために。
それは決してFW(=エゴイスト)の「言いなりになる」というわけではなく、「信頼する」ということだったと思います。
ストライカーと司令塔のプライドがぶつかり合うシーンです。
この漫画はこのようなモノローグでの感情表現が非常に効果的で印象的です。
さいごに
上の方に「W杯に出場するのが当たり前になった」と書きましたが、2017年3月現在のサッカー日本代表は、2018年ロシアW杯の出場に向けて非常に苦しい闘いを強いられています。
サッカー日本代表を応援したくなることうけあいな漫画ですので、こちらを手に実際の日本代表選手たちの闘いを応援するのはいかがでしょうか。
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