富野監督の過去のインタビューや執筆された文章をまとめたガンダム系の読み物の中でも資料集的な側面の強い一冊。
2000年に発売されて長らく絶版となっており読みたくても読めなかったんですが、2024年11月についに電子書籍として復活し、ようやく読むことができました。
ガンダムの現場から: 富野由悠季発言集
- 編者:氷川竜介・藤津亮太
- 出版社:キネマ旬報社
- 発売日:2000/10/16、2024/11/5(電子版)
- 頁数:276ページ
- オススメ度:☆☆☆☆☆
「富野由悠季名言集!!」というよりは、当時の雑誌等の各種媒体での発言やインタビューをまとめた”資料集”的なニュアンスの強い書籍。
当時の富野監督(及びスタッフ)がどんな思いを込めて『機動戦士ガンダム』を製作していたのかがわかる資料が豊富に収録されており、テレビ版から映画3作品までの中で製作陣が思い描いていたガンダムという作品の"文脈"が読み取れる非常に興味深い内容になっている。中には当時の資料だからこその裏設定・ボツ設定みたいなものもあって面白い。
以下、各章のざっとした感想・メモ。
第一章はガンボーイの企画メモ。ガンダムの元の企画が宇宙版15少年漂流記だったときのもので、いわゆるトミノメモよりもさらに昔のもの。テーマが「自由と義務」であるということとそれに対しての富野監督の考えが書かれており、そこについての記述は後のガンダムシリーズの根幹となるものを感じさせる。人物設定はガンダムと共通しているものから全然違うものまで。ククルスドアンがかなり早い段階で設定されていたり、ミハルがザビ家の重要人物っぽい名前だったりというのは面白い。
第二章は各アニメ誌のインタビューやレコードに記載された解説、『機動戦士ガンダム記録全集』にかかれた文章等で富野監督が語ったことがまとめられている。ファンからの質問に富野監督がかなりぶっちゃけて答えているコーナーが面白い(時期的にはテレビ放映が中盤~終盤に入るぐらいの時期、多分)。
「演出ノォト」の項では富野監督のニュータイプについての考えが書かれている(102p等)のが非常に興味深い。
第三章は劇場版関連の話。
伝説の新世紀宣言の本文も収録されている(167p)。テレビ版におけるガンダムのパワーアップパーツ(Gファイター)への怨み節もありつつ、出すからにはちゃんと活かしきるという富野監督の姿勢が読み取れる。
第四章はアニメ誌以外での一般メディアにおける富野監督の発言、文章。
アニメにおけるバンク(合体シーンや必殺技シーンなどの使いまわしする映像)は、保管して貯めておくという意味から本当に銀行のBANKから来ているのは初めて知った(247p)。
巻末に電子版特典として書籍版には掲載されていなかった原稿3点が収録。こちらも20p近くあって中々のボリューム。