『邪馬台国はどこですか?』から連なるシリーズ4作目。
第一作が1998年なので何気に20年近く続いていることに驚きました。
崇徳院を追いかけて
- 著者:鯨統一郎
- 出版社:東京創元社(創元推理文庫)
- 発売日:2016/7/22
- 頁数:293ページ
- オススメ度:☆☆☆
邪馬台国シリーズ4作目となり、シリーズでは初の長編。バーの中で歴史論争を繰り広げていたこれまでのシリーズとは雰囲気ががらっと変わり、殺人事件の謎を追っていく本格ミステリ。
時系列は2作目と3作目との間の話で、3作目で詳細が語られていなかった宮田と静香が親密となった経緯も併せて描かれています。シリーズものとして読んでいたので、宮田と静香が近づいていく過程は楽しく読めたんですが、1本のミステリ小説として見ると「ややもう一つ押しが弱いかな?」というのが正直な印象。もうひとつ展開かオチが欲しかったところ。また、せっかくなのでエピローグあたりでスリーバレーのメンバーも登場して今回の事件について語り合う、みたいな展開があったらよかったな。
ちなみにシリーズ作品ではあるが、「メインキャラクターの二人は少し因縁のある関係」ぐらいの知識があれば前作までを読んでいなくでも特に問題なく読み進めることができると思います。
やっぱりシリーズ通して歴史の教科書を読み直したくなる作品。今回ついに高校の日本史の教科書を一緒に買いました(教科書って本屋で売ってたのは驚いた)。
タイトルにもなっている崇徳院は歴史の授業では「崇徳上皇」という名前で聞くことが多く、平安末期に武士の対等のきっかけともなった保元の乱で後白河天皇に敗れて隠岐に流されています。百人一首の「瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末に逢はむとぞ思ふ」でも有名。日本最大の怨霊とされていたことは知らなかったので新鮮だった(これこそ教科書に載っていない日本史)。