ゆめろぐ

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【読書感想文】バイバイ、ブラックバード




『グッド・バイ』が映画化されたというニュースをみていたらふと読みたくなったので、何年かぶりに再読。

バイバイ、ブラックバード


  • 著者:伊坂幸太郎
  • 出版社:双葉文庫
  • 発売日:2013/3/17(文庫版)
  • 頁数:361ページ(文庫版)
  • オススメ度:☆☆☆☆☆

単行本は2010年7月に双葉社より刊行されています。


ストーリーは太宰治の未完の絶筆である『グッド・バイ』のオマージュ。何人もの女性と同時に付き合っていた主人公が、関係を清算するために非常に個性的な一人の女性の協力を得て一人ひとりの女性の所に「お別れ行脚」をする、というのが根本のストーリー。


ストーリーの根本部分の元になった『グッド・バイ』の方も近いうちに読み比べておきたい。




話の大筋は『グッド・バイ』に倣いつつも、話の展開やキャラクター達の小気味のいい会話の掛け合いは紛うことなき伊坂ワールド。


強烈すぎるヒロイン(?)である繭美の正体だったり星野が乗せられる「あのバス」はどこへ向かうのか?といった"物語の謎"にあたる部分はあくまでも二の次。キャラクター達の掛け合いと話の展開を楽しむことがメインとなる、非常に伊坂さんらしい作品。そのあたりは『ゴールデンスランバー』などに近いかな。中々明かされない謎も物語を楽しむための舞台装置の1つでしかなく、謎の答えを求めるのは"野暮"とすら感じさせられてしまうから不思議である。



5人の女性と順々に別れていく話の都合上マンネリしてしまいそうに見えるが、そうさせない展開はさすが。マンネリを感じさせない展開の中にちりばめられているお約束(各話の繰り返しネタ)のバランスも良く、「一話一話が独立した物語としての完成度が高い」との評価もあるけれども、書き下ろしの最終話も含めてやっぱり全編通して楽しむのが一番だと思う。



はじめは理不尽で粗暴なモンスターのようなイメージだった繭美だが、2話3話と読み進めていくうちに自然と親しみがわいてくる所も不思議。表向き主人公である星野は(良くも悪くも)全編通して変化しない(ブレない、とも言えるし成長しないもと言える)キャラクターであるので、もう一人の主人公といってもよい繭美が物語が進むにつれ(星野と行動を共にしたことで)どのように変化したかを見ていくのも楽しいかもしれない。



最後に本筋とは関係ないけど、印象に残った繭美のセリフ。

タイムマシンがあったら、おまえを小学校に送り返すのはやめた。おまえの生まれる前にいって、おまえの親たちに避妊を勧める(89ページ)


伊坂的言い回しのセンス溢れる存在否定。
繭美のキャラクターや星野との関係からさっと流してしまいがちだが、よくよく考えると中々に酷いことを言っている。