本屋で表紙買いしました。
『機動戦士ガンダム』の演説に学ぶ人心掌握術
- 著者:石井誠、高村泰稔
- 解説:川上徹也
- 出版社:集英社
- 発売日:2020/1/24
- 頁数:127ページ
- オススメ度:☆☆☆~☆☆☆☆
ガンダムシリーズに登場する様々な演説シーンを取り上げ、そこから実際に活用できるトーク・スピーチのテクニックを学ぼうというのが主題の本。
各演説の解説を担当している演説分析家の川上氏はガンダムの知識がほとんどないというのは逆に面白いです。
題材となる作品は、初代『ガンダム』から『0083』『Z』『ZZ』を経て『逆襲のシャア』まで、さらには最近の作品である『THE・ORIGIN』『UC』も加わっています。そこからギレン・シャア・レビル将軍などの印象的な演説やキャラクター同士の会話シーンがピックアップされ、そこで使われているテクニックや注目すべきポイントが解説されるというのが本書の主な流れになっています。
本書で非常に面白いのは実在の人物が実際に行った演説やプロパガンダが事例や比較として紹介されているところ。(例:ギレンとヒトラーに共通する演説手法、ラプラスの箱についてのミネバの演説とオバマ元大統領の大統領選でのスピーチの類似点、等)
とは言え、実践的な演説スキルを身に付けるためのハウツー本というよりは、物語中の背景も踏まえて各シーンに含まれているテクニックのエッセンスを紹介していくといった内容。なので「人心掌握術」といってしまうとやや大仰かもしれません。あくまでガンダムのファンブック的な要素が大きい本でありつつも、書かれていることは職場でのプレゼンテーションや部下や取引相手との接し方などの参考にできる本、ぐらいに認識しておくのが調度いいぐらいなんじゃないかと思いました。
個人的な感想を一言でいうと、「ガンダムの読み物としてはそれなりに楽しめる。"演説"という観点では川上氏の著書を読んでみたくなった」という感じ。
そんなわけで、ガンダムファンには星4、ガンダムを知らない人には星3という意味で、おススメ度は星3~4としました。
最後に印象的だった一言を引用。
ガンダムの演説も、そのほとんどに戦争プロパガンダ法則が使われていることかわかるだろう。フィクションの世界では「カッコいい」「感動する」でいいのだが、現実世界では、簡単に感情を動かされないというリテラシーも必要だ。(82ページ)
納得。
確かにギレンやシャアの演説シーンはガンダムファンとしては見ていてテンションが上がるし引き込まれるものがあります。でも、こんなのが現実に出てきたらたまったものじゃないです。
個人的な考えですが、ガンダムシリーズの一番のテーマは「戦争のおこるメカニズム。人はなぜ争いをやめられないのか?」だと思っています。そして本書で事例としてあげられている実在の演説は、まさに国や人々を戦争に向かわせたようなものが大半を占めていました。
ネットの発展で多すぎる情報が容易に手に入るようになり、その中には不必要に受け取り手の感情を煽るようなものも多いくなっています。国全体がおかしな方向に向かってるのではないかとすら思える今、感情に流されずに冷静に情報を受け取り咀嚼する力が必要とされてるのかもしれないですね。