2025年3月7日に公開された映画『ウィキッド ふたりの魔女』を見るための予習として、小説版と1939年の映画版の感想を書きました。
せっかくなので、2013年のDisneyによる『オズ はじまりの戦い』も観ました。本作は『オズの魔法使い』の前日譚にあたるものです。『ウィキッド』とは色々と設定が異なるので関係ないもの(パラレル作品の一つと言った感じ)ではあるのですが、これはこれで結構面白いので好きな作品です。
ちなみにこの感想の中で他の作品との比較をしている部分が多々出てきますが、角川文庫の2013年出版(訳:柴田 元幸)『オズの魔法使い』を「小説版」、1939年のジュディ・ガーランド主演による映画『オズの魔法使』を「映画版(1939年)」と呼称しています。
以下、一部本作のネタバレを含んでいますので予めご了承ください。
目次
基本情報
- 監督:サム・ライミ
- 公開:2013年3月
- 評価:★4(最高★5)
児童文学小説「オズの魔法使い」を元に、ディズニーが制作したファンタジー映画。
「オズの魔法使い」本編の約20年ほど前の時代が舞台。若かりし頃のオズを主人公として、彼がどのようにしてオズの国の大魔法使いとなっていったのかを描いた作品。『オズの魔法使い』の前日譚にあたる内容になっている。
監督は『スパイダーマン』シリーズや『死霊のはらわた』シリーズなどのサム・ライミ。
ちなみに原題は「Oz: The Great and Powerful」で、元々のタイトルには「はじまりの」といった意味はない模様。
「オズの魔法使い」のストーリーは知ってた方がいい?
本作の原作にあたる「オズの魔法使い」のストーリーを事前に知っておいたいいかというと、必ずしも必要ではないと思います。本作は単体で独立した作品ですし、時系列的にも「オズの魔法使い」の前になっています。
ですが、本作はそこかしこに原作や過去の映像作品の設定やオマージュが出てくるので、それらを知っていた方がより楽しめると思います。最低でもWiki等で「オズの魔法使い」のあらすじぐらいは読んでから観れば十分に楽しめると思いますが、個人的には映画版(1939年)を先に観ておくのをお勧めします(1時間半ちょいぐらいでサッと見れるので)。
感想など
面白かった!!
ストーリーは「オズの魔法使い」という不朽の名作をベースにしているということを差し引いても普通に面白かったです。2時間越えのそこそこ長い映画ですが特に中だるみも無く最後まで見ていたと思います。
まずはやっぱりキャストが豪華。オズ役のジェームズ・フランコが非常にいい。サム・ライミ監督繋がりで言えば『スパイダーマン』シリーズでピーターの親友のハリー・オズボーン役のイメージが強いです。めちゃくちゃイケメンでカッコいいんですが、どこかスカしているというか胡散臭さを感じさせる部分がオズの役にぴったりだったと思います。あとは本作のキーパーソンである3人の魔女。グリンダ役のミシェル・ウィリアムズ、エヴァノラ役のレイチェル・ワイズ、セオドラ役のミラ・キュニス。それぞれ違った魅力があって美しい女優さんなんですが、個人的にはミシェル・ウィリアムズが良かったです。レニー・ゼルウィガーとかも近い部分があると思うんですがこの系統のお顔が好きです。あとは序盤ではヒロインポジションになるのかと思っていたセオドラの変貌ぶりも凄かった。パッケージにシルエットがあったから誰かが緑の悪い魔女になるんだろうとは思ってましたが、「いやお前がなるんかい!!」って感じ。
あとはサイドを固めるキャラクターも良かったですね。お猿のフィンリーと陶器の少女がどっちも可愛くていいキャラしてました。
また、映像面についてはさすがディズニー。カラフルで綺麗な世界観は映画版(1939年)でも同様に「オズの魔法使い」のベースとなる部分かと思いますが、本作においてもビジュアル面は一切文句が無いといった感じでした。残念な所をあげるとすればDVDではなく劇場で観たかった作品という所ですね。
ビジュアル面で特に印象的だったのはやっぱり画面が切り替わったシーン。冒頭20分ぐらいまでのカンザスでのシーンは白黒で小さい画面が続き、オズの国に来て目を覚ますのと同時に画面が広がってフルカラーの景色が画面いっぱいに映る演出は非常に良かった。ここか一番劇場で見たかったシーンです。この切り替わりについてはモノクロだったカンザスからオズの国に飛ばされて扉を開けるとフルカラーの街が広がっていた映画版(1939年)のオマージュかなと思います。他にも本作では原作や過去作品のオマージュが多いので、その点は見ていて非常に楽しい所です。
他にはカンザスとオズの国で一部キャストが共通しているのも映画版(1939年)の演出のオマージュかなと思います。キャストが共通していることに物語上の意味があった映画版(1939年)に対し、本作ではそこまでキャストが共通していることの重要性は明確に描かれていない(キャストの使いまわしに見えなくもない)のですが、それぞれのキャラクターとオズとの関係性を考えてみると「これは絶対オマージュだろ」と思いたくなる部分です。具体的にはキャストが共通しているのは次の3人。マジシャンだったオズの相棒のフランクと、物語序盤からオズの正体を知っていながらもサポートし続けて最後には真の友人となったフィンリー。歩けるようにしてあげることができなかった車椅子の少女と、接着剤で足を直して歩けるようにしてあげた陶器の少女。そしてカンザスでは結ばれることのなかったアニー(婚約者の名前から後にドロシーの母になるらしい)と、本作の最後で無事結ばれたグリンダ。どれもペテン師だった頃のオズでは成し遂げられなかったことを真の魔法使いになる過程で成し遂げていくことの象徴でもあり、原作からのテーマである「望んでいたものははじめから自分の中にあった」という部分にも繋がるものだと思います。
原作や過去作品を感じる部分
他に本作を見ていて原作や過去作品のリスペクトやオマージュを感じた部分をざっと。ちょうど映画版(1939年)を見た直後に本作を見たので、「あれはそうだ」「これもそうだ」って感じて見てて楽しかったです。
・カンザスから竜巻で飛ばされる導入部分
・前述の白黒からフルカラーに切り替わるのは映画版(1939年)のオマージュ
・同じく前述のカンザスとオズの国で共通しているキャストがいる
・エヴァノラが差し向けた黒い猿たちは原作の黄金の帽子で呼び出すことができる羽の生えた猿
・エメラルドの街に通じる黄色いレンガの道
・原作で南の国に向かう途中でドロシー達が立ち寄った陶器の街
・グリンダの魔法で泡に乗って移動する(映画版(1939年)でもグリンダは泡の中から現れる)
・カカシを作りそうな農民、ブリキの木こりを作りそうな職人
・となると冒頭でてきてフィンキーを襲ったライオンはもしかして・・・
・エメラルドシティの東にある死を招くケシ畑
・悪い魔女の率いるウィンキーの軍隊
・グリンダがお守りに額にキスをする
・望んでいたものははじめから自分の中にあったというグリンダのセリフ
多分見落としているだけで他にももっとあったと思います。
3人の魔女
本作に登場する魔女は以下の3人。
・東の魔女エヴァノラ(姉) ⇒老婆の姿の悪い魔女に
・西の魔女セオドラ(妹) ⇒緑の悪い魔女に
・南の良い魔女グリンダ
本作では北の魔女は出てきません。東の魔女エヴァノラは「オズの魔法使い」本編ではドロシーの家の下敷きに、西の魔女セオドラは本編でもそのまま緑の肌をした悪い魔女として、そしてグリンダはそのまま良い魔女として登場し、本作からちゃんと話が繋がるようになっています。
ちなみに『ウィキッド』では緑の肌をした後の西の悪い魔女となるキャラクターの名前はエルファバとなっているので、本作とはそもそもの設定が違うことがわかります。ちなみに東の悪い魔女にあたるキャラクターの名前はネッサローズで、エルファバの妹という設定になっています。本作や映画版(1939年)では西の魔女の方が妹となっているのでそこも違っているところですね。
ついでにここまで読んだ・見た作品の魔女の役割と名前を整理。
<小説版>
・北の良い魔女
・東の悪い魔女
・西の悪い魔女
・南の良い魔女:グリンダ
<映画版(1939年)>
・北の良い魔女:グリンダ(南の魔女の役割も兼ねる)
・東の悪い魔女(姉)
・西の悪い魔女(妹)
<オズ はじまりの戦い>
・東の悪い魔女:エヴァノラ(姉)
・西の悪い魔女:セオドラ(妹)
・南の良い魔女:グリンダ
まあ大体の作品で東と西は役割が共通していますが、南と北は別だったりグリンダが兼務してたりって感じですね。
まとめ
個人的には予習として読みたかった・観たかった作品はすべて感想することができたので、今度こそ映画『ウィキッド ふたりの魔女』を観に行こうと思います。