ゆめろぐ

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自由を夢見るアラサー社畜が、仕事・趣味・生活について書き連ねていく雑記ブログです。

「わたしを離さないで」と「アイランド」同じ題材でここまでで違うのも面白い

※物語の特性上、あらすじの段階で重大なネタバレが含まれますのでご注意ください。



先日面白い記事を読みました。

dot.asahi.com


クローン文化財と言って、最新のデジタル技術と修復の技術などにより、美術品・建築物などの文化財をオリジナルの質感・素材をそのままに再現するというものだそうです。
本物とはまた別の複製ですので、鑑賞者が手で触れることもできる・拡大縮小しての再現も可能 ・災害やテロなどで破損や喪失した文化財も復活させることができる、など今までにない画期的な文化財の保存方法として期待されます。ぜひ広く普及して欲しいです。



ところで、上記は文化財の話でしたが、一般的に「クローン」というと「人間(もしくは動物)の複製」「人造の人間」といったイメージが浮かぶ人が大半だと思います。僕も勿論そうです。今回は冒頭の記事を読んで思い出した、クローンを題材として取り扱った印象的な映画2つをご紹介したいと思います。





目次


わたしを離さないで

概要・あらすじ


  • 監督:マーク・ロマネク
  • 制作:イギリス
  • 公開:2010年
  • 原作:カズオ・イシグロ

 

舞台は1970年代のイギリス。
静かな森の中の寄宿学校ヘールシャムで幼少期を過ごす主人公キャシー、その親友ルース、そしてキャシーが想いを寄せるトミーの3人。物語の序盤はキャシーとトミー、そして二人の間に割り込んできたルースの三角関係が描かれる淡い恋愛映画・青春映画のように見えます。静かで穏やかな時間が流れていくなか、次第にこの施設の目的やキャシーら3人を含むヘールシャムの子供たちの役割が明かされます。

ヘールシャムにいる子供たちはすべて、臓器提供を目的に作られ育てられているクローンでした。卒業後から順次「提供」がはじまり、大半は3度目か4度目の「提供」を迎えるころまでには「終了」を迎える(生を終える)ことを運命付けられていました。

トミーのことが好きだったキャシーでしたが、ルースとトミーが恋仲になってしまったことで、ヘールシャムを卒業してからはだんだんと二人から距離を置くようになっていきました。しかし、3人の身にも「提供」という残酷な現実が迫る中、キャシーは再びルース・トミーと運命的な再会をすることに・・・。

感想

異色の悲しいSFドラマ。「臓器を提供するために作りだされ使い捨てられる」という残酷な運命を背負わされている登場人物たちですが、苦悩や葛藤は感じていながらもなお「素直すぎる」と思えるほどその運命を自然に当たり前のものとして受け入れているように見えます。

その背景には、この世界では「医療のためにクローンを作り臓器を提供させる」ということが(賛否はあることが予想されるものの)社会的に認められているという設定があるからに思えます。クローンである主人公たちにあるのは諦観や達観とは違う何か、おかしいとは感じていても絶対に逃れられないと諦めざるを得ない普遍的な強制力のような何か。だからこそ自らの運命を知った後も、「生きるために逃げる」という選択にはならず(おそらく発想すらない)、せいぜい「猶予」という制度に希望を見ようとしただけに留まりました。後述の「アイランド」の世界はクローン人間の製造や臓器利用は法律で禁じられていて、主人公たちは秘密裏に生み出されています。だからこそ、逃げたり戦ったりしようがあったのかもしれません。それを考えれば、「わたしを離さないで」の方が数段残酷な世界でありながら、どこか現実味を感じさせられてしまう世界であるともいえます。

本作は実際に誰も救われない話です。しかし、単純に「後味の悪い鬱展開モノ」ということではなく、普通の人間であろうがクローンであろうが生きている以上誰にでもいつかは「終了」が訪れるものであり、それまでの間に何をしてどう生きるかという、人としての根源的なテーマを訴えかけてくる作品だったと思います。
だからこそ、ラストシーンでのキャシーの「私たちと、私たちが助ける人たちの違いは何?」という問いかけが重く心に響くのです。


現実の社会においても「再生医療」という言葉が存在しています。再生医療は人体から細胞を取り出し、必要な臓器に育てて(?)から再度移植などをするもので、クローン人間とは全く別のものです。しかし、その行きつく先、実際に我々の世界に訪れる未来がこのようなものではないとは言い切れません。クローン羊のドリーが話題になってからはすでに20年が経過しています。「我々とクローン人間の違いはなにか?」というテーマについて真剣に向き合うべき時は近いかもしれませんね。


ちなみに日本でも、多部未華子さん主演で舞台化、綾瀬はるかさん主演でドラマ化されています。僕はどっちも見れていないんですが、ドラマの方は色々と展開も違うようなので、機会があれば通してみてみたいですね。


アイランド

概要・あらすじ


  • 監督:マイケル・ベイ
  • 制作:アメリカ
  • 公開:2005年

 

舞台は2019年のアメリカ。
地球の大気は汚染され、主人公リンカーンを含む多くの人々は徹底的に管理された施設の中で暮らしていた。そこでは地上で唯一汚染を免れた最後の楽園「アイランド」に移住できるものを選ぶ抽選が行われていた。そこに住む人すべての人の唯一の希望はその「アイランド」への移住をすること。

しかし、ある日リンカーンはアイランド行きとなったはずの男が臓器を取り出されている所を目撃します。実は地上は汚染などされておらず、その施設で過ごす者たちはすべて、保険会社の顧客に臓器や代理出産を提供するための「商品」でした。

リンカーンは「アイランド」行きの決まった女性、ジョーダンを連れて施設からの脱走を決意する。

感想

「わたしを離さないで」の終始静かで暗い雰囲気からは一転、まさにハリウッドな映画。「臓器提供のために作られて消費されるクローン」という題材は同じですが、登場人物や物語の向かうベクトルは全くの逆となっています。

「アイランド」では、クローンから臓器が提供されていることは世の中や本人たちにも秘密にされています。真実を知った主人公たちはそれに抗い戦い最後には勝利して自由を手にします。その過程でアクションや恋愛要素が織り込まれた、これぞハリウッドな娯楽作品となっています。

イメージは「驚愕の事実が発覚→戦おう!→爆発・銃撃戦・カーチェイス→勝利!自由!ブロンド美女とキス!」と言った感じですね。


ただ、本作を初めて見たとき(上記の「わたしを離さないで」よりも数年前でした)に最初に感じたのは「なにかが惜しい!」でした。娯楽映画としてはそれなりの出来だったかもしれませんが、そちらに比重を多くおかれてしまったことで、「クローン人間の生や命」という部分についてのテーマ性を感じませんでした。もっと深い内容にできたかもしれないのに、「クローン」や「命」を取り扱った割には普通のアクション大作となってしまったのが非常に惜しい、というような所がストレートな感想です。
しかし、そもそも本作は「娯楽大作」を念頭において制作されたようなので、上記は少し求めすぎなのかもしれません。


主演はユアン・マクレガーとスカーレット・ヨハンソン。キャストについては文句なく豪華な作品ですね。


さいごに:両作品の違いは

「臓器提供のために作られて消費されるクローン」という題材は同じものの、その他の点においては全く違う(真逆と言ってもいい)作品になっています。
上記でも述べてきましたが、主な違いとしては、

  • クローンの社会的な立ち位置が違う。あくまで医療政策の一環として生み出された「わたしを離さないで」の登場人物たちと、極秘に(ある種違法行為として)生み出された「アイランド」の登場人物たち。
  • 残酷で逃れようのない現実を受け入れた「わたしを離さないで」の登場人物たちと、抗い戦った「アイランド」の登場人物たち。
  • 「命」というテーマを訴えかけてきた「わたしを離さないで」と、あくまで「娯楽大作」であるという点から外れることなく広く楽しめる作品とした「アイランド」


僕は個人的には「わたしを離さないで」の方が(DVDや原作小説を買うぐらいには)好きなので、ややそっちのほうがアゲなレビューになっているかもしれません。ただ、前述の通り物語や作品としてのベクトルは全く逆のものなので、どちらが上ということはなく、あくまで見る人の好みによるものだを思っています。
(家族でお茶の間で観るなら間違いなくアイランドだな・・・。)



あなたは、どちらがお好みですか。





【2017/10/5追記】カズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞に!!

本記事にてご紹介させていただいた「わたしを離さないで」の原作者であるカズオ・イシグロ氏がノーベル文学賞の受賞者に選ばれたと発表されました。


授賞式は12月10日にスウェーデンのストックホルムで行われるそうです。

 
 



【同じ雰囲気・近いテーマ性を感じる作品】
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